NGO/NPO・企業環境政策提言フォーラム

第11回 NGO/NPO・企業環境政策提言フォーラム

日時:平成24年3月21日(水) 13:00~16:30

会場:中央合同庁舎5号館 講堂

■ プログラム

13:00
開会挨拶(横光 環境副大臣)
13:10
審査報告(廣野 委員長)
13:15
優秀提言 2件の発表
13:55
委員及び会場との質疑応答
14:25
休 憩
14:35
優秀に準ずる提言 3件の発表
15:35
委員及び会場との質疑応答
16:05
第10回 優秀提言 フィージビリティ報告
16:20
講 評(廣野 委員長)
16:30
閉会挨拶(三好 官房審議官)

■ 主な内容

■ 開会挨拶  横光克彦 環境副大臣

震災以降、がれき処理等の課題がある。また、今年開催されるRIO+20のキーワードは「The Future We Want」。あらゆる主体がビジョンを共有し、持続可能な社会を作るには、多様な主体が利害を乗り越えてパートナーシップによる環境取り組みの推進が必要である。環境に関する政策提言を募集し、政策への反映を目指している。応募提言は第三者の専門家委員会が審査を行い、行政主導型から、民の発想、現場の意識を政策に反映させる仕組みを作っていく。協働による政策形成の実践を目指している。環境省は政策の実現に努力する。

■ 審査報告  NGO/NPO・企業環境政策提言推進委員会 廣野良吉 委員長

今回から2部門、環境省・中央省庁に対する提言と地方自治体に対する提言を設け、それぞれに優秀提言・優秀に準ずる提言を選考した。従来の環境政策だけではなく、新たなイノベーションのあるもの、また実行主体が明確であることなどが基準となった。

■ 優秀提言2件の発表
○ 途上国の森林保全に寄与する社会セーフガードに関するガイドラインの作成・試行・普及

〔財団法人 地球・人間環境フォーラム〕坂本有希氏

環境省・外務省等関連する中央省庁への提言。途上国においてREDDプラス・プロジェクトについて、ガイドラインを作成・普及することで森林劣化の防止と温暖化対策の両方を解決できる。企業を巻き込んだ国際貢献の取り組みとして提言した。

今ある森林をこれ以上減らさない、質を保つ。何もしなかった場合と手を加えて保全できた場合のCO2の差異。途上国・先住民族の意見を取り入れるFPICという考え方をREDDプラスに取り入れている。事前に十分な情報を入れて自らの考えで同意を得る。コミュニティの権利尊重を日本が提案することは重要である。

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○ 日本の自然エネルギー活用と危機管理政策における離島の役割

〔特定非営利活動法人 八丈島産業育成会〕宮崎岩一氏、山田達人氏

青ヶ島でマイクログリッドを達成させ、それを八丈島で構築し、東京都に提言する。それが他の離島(国内外)へ波及することを目指す。民間のアイディアを地方自治体と協議し、それを国や都などの行政機関にあげて実施している手法の実効性を提言する。離島の持つ課題を解決するために、自然エネルギーに着目し、小型の発電システムを構築することで、災害時の危機管理政策における離島の役割や限界地域でのエネルギー確保、産業構築・雇用拡大にも貢献することが出来る。

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■ 優秀提言2件に対する質疑応答
【地球・人間環境フォーラムへの質問】
世古委員:
地域に入るときのファシリテートなどの役割は、現地の人が望ましい、育成などはどのように考えているか。
回答:
現地のNGO、研究者などと連携することを考えている。プロジェクトサイトで実証・テストをしてみたい。日本の企業がかかわっているプロジェクトがいい。国はまだ決まっていない。これまでの経験からも、現地の人とやっていきたい。
世古委員:
サラワクの住民の話があったが、政府で決まっている計画に対応しても、本当の意味の市民参加・課題解決にはならず、詭弁と思う。
回答:
いろいろなレベルがある。今回の提案は個別のREDプロジェクトについてである。プロジェクトがないところはやれないという観点は重要。ご意見を大切にしたい。
崎田委員:
事前にというが、開発するかどうかも含め計画の本当に当初から地域の方が参加できる仕組みとなっているか。
回答:
戦略的開発アセスメントだと思うが、個別の問題について地域住民の意見を取り入れること。開発前にどこまで聞くことが出来るかはわからない。国家的な戦略の中で意見を聞くことになるが、それは想定していない。
田中委員:
社会セーフガイドラインの構想がFPICを盛り込んだものとするという提案だが、ガイドラインとFPICの新しい名前を付けた意味を知りたい。
回答:
FPICを個別プロジェクトでやっていくことが主眼である。
崎田委員:
説明の中で、ガイドライン作成について、現場の実証性のようなものが必要なのか。利害関係者や企業、専門家などの協議会形式なのか?
回答:
すでに商工会、企業、観光協会、NPOなどとネットワークを広げてやっている。
崎田委員:
すでに日本政府の関係するプロジェクトが11件進んでいるということだが、それに連動すれば2~3年かかるところをもっと早くできるかどうか?
回答:
11件は日本政府が主体的にかかわるというよりもフィジビリティスタディにお金を出しているもの。文言を並べてもどうやって現場に確認するかが課題なので、日本の企業や機関がかかわっているプロジェクトで試行することで、関係者の意識改革にもつながる。早くするいいアイディアはないが、2~3年待っていられないというのは同感である。
【八丈島産業育成会への質問】
田中委員:
島は地理的条件としてほとんど同じものを持っている。しかし、2000キロ余り離れているところは、同じような条件ではない。典型的なものと情報交換をする中で、新しい見方が出てくる場合もあり、その方がおもしろいのではないか。
回答:
エコ八(8種類のエネルギーを構築する)が一つのカギ。八丈島で技術や試験を試し、それを他の離島に持って行き、そこで調査して、合ったものを取り入れることを考えている。バッテリーを使って、完結することで、目に見える形で確実に自然エネルギーを使う。
郡島委員:
壮大なビジョンだが、数値的データが欠落している。プロジェクト管理、計測可能な管理をして検証することはこれまでしてきたか? 島によって条件が違うのはそのデータの中から検証できる。プロジェクトの進行管理と評価できる仕組みを構築してほしい。
回答:
今回は発表しなかったが、数値的データは持っており、それをもとに青ヶ島の実験をする。
崎田委員:
自立したエネルギー源の確保は素晴らしくチャレンジしてほしい。それぞれの地域にとって何が効率的かは島によって違う。その判断の仕方を検証し、全国に広めてほしい。
どう発電し、どう使うかをみんなで考える場づくり・仕組みを教えてほしい。
世古委員:
青ヶ島の費用は何を充てたのか? 環境省のフィジビリティでは、どのような調査を考えているか。
回答:
東京都、国土交通省なども含め、初期構築に補助金をあて、その後収益性を持たせていく方向性で考えている。
【八丈島産業育成会への質問】
会場質問 1):
8つのエネルギーのエネルギーバランスを管理するEMSをどう考えているのか?また、民間の電力会社などの活用はどう考えているか。
回答:
地熱40%、太陽水力風力40%、波力など20%.八丈島は地熱発電所があることが強みで、100%可能。
会場質問 2):
今、八丈島で必要としているエネルギーのどのくらいをまかなっており、いつくらいに全部を賄えるのか。
回答:
10年以内にかなえていくことを目標としている。
会場質問 3):
雇用拡大はどのようなプランか。
回答:
水力発電、風車を立てるなどにより、新しい産業を構築できる。管理する人も必要。
会場質問 4):
運営資金の調達は?
回答:
システムを他の島に活用させる際に、ビジネスとして構築することを考えている。バッテリーを島内で販売するなど。積極的に企業と協働し、活動支援をもらっている。JTB、三菱自動車、スズキ自動車からの支援。環境教育による収益(8種のエネルギーの実感体験)
崎田委員:
八丈島の意見を聞いて、発電を考えるとき、金融機関に早めに声をかけ、計画から関わることを勧める。発電の整備やバッテリー販売と聞いたが、使う人が作るところから仕組みが見えて、一緒になってつくろうという意識を持てるような政策提案、FSをしてほしい。
回答:
信用組合と話が進んでいる。トヨタ財団でも震災対応でバッテリーの利用実証実験を行っている。
■ 優秀に準ずる提言 3件の発表
○ 映像共有プラットフォームを活用した環境教育とメディアリテラシー教育の推進
  -ICTの進化に適応したアウトプット型環境教育手法の確立-

〔株式会社 TREE〕水野雅弘氏

今年は環境教育等推進法が改正されることもあり、今後ますます子どもたちの環境教育が重要な時代になる。社会環境が変化し、身の回りに情報がたくさんあふれている中で、これまではインプット型、知識を受けるだけの環境教育から、自ら感じ、発信するアウトプット型の教育、特に映像教育プラットフォームを活用する方法の提案。最近は、ユーチューブなど映像が身近になってきたので、子どもたちが映像を撮り、そこから学び、自ら発信することにより受信することも学ぶ、メディアリテラシーの教育を含めた提言。

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○ 国家プロジェクトとしての紙の品種別リサイクルシステムの構築について
  -上質系紙のリサイクルシステムの構築による紙の品種別リサイクルシステムの構築-

〔日本古紙リサイクル研究会〕福田格氏、菊池健氏

紙は溶かせばリサイクルできているという誤解があると思うが、上質紙については、再生されてもう一度、上質系の紙にすることは国内では実施されていない。現在、紙の20%を占める上質紙のリサイクルを実現させたいと思い提案した。国家プロジェクトとして提案したのは、紙の消費がほぼ全国民、全国にわたっており、一団体や業界でできるものではなく、全国の協力が必要であるため。実現できれば、CO2の大幅削減と上質系古紙という新しい資源が獲得できる。

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○ 製鉄所の粉塵問題にパートナーシップで取り組む

〔特定非営利活動法人ちば環境情報センター・Atelier Motherly(アトリエ マザリー)〕
  古川美之氏、土井麻記子氏

企業、行政、市民、団体の中で、問題に対してそれぞれ話し合って調整する中で、各セクターを動かすキーパーソンがいる。これまでキーパーソンは裏方として活動してきたが、この粉塵問題に対するリスクコミュニケーションの担当者として各セクターから決めて出し、そのメンバーでチームを作って、その組織を公的な機関として位置づける制度をつくろうという提案。

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■ 優秀に準ずる提言3件に対する質疑応答
【(株)TREEへの質問・意見】
世古委員:
環境省が中心になって進めるというのはおかしい。市民が中心になって進めるのを環境省が応援するならわかるが。
回答:
ノウハウの共有化においては、コンテストなど国が主導でやってはどうかという考え。基本的には市民中心。
世古委員:
コーディネーターの役割は重要で、パートナーシップを推進する権限などはどうするのか。
回答:
むずかしい。そこもパートナーシップで決めてはどうか。
回答:
学校教育だけではなく、企業の出前授業などもある。地域を指定し、学校や地域が連携する。小さく始めたい。ITを利用することで、忙しい学校の先生の効率化にもつながる。
崎田委員:
審査の過程で、自ら映像を撮る過程で心の育成が図れるということを説明され評価した。今回の発表は全体のシステムの話が多かった。現場でやるとしたら、地域の中で市民主体のどういう仕組みを作るかを明確にしてほしい。
廣野委員:
家庭教育・初等教育が重要。環境省だけではなく、文部科学省もアプローチが必要。
会場質問:
同様に文科省に提言してはどうか?
回答:
環境教育が、文科省、農水省、外務省・・・全てにおいて関連する。地球市民としての発信は、環境という視点から見たときに発展するので、モデルが作りやすい。本当は、各省庁が一緒になって進めたらいい。
環境教育のゴールは持続可能な社会。地域のグリーン経済。できれば環境省で住民が一緒になることで、住民のグリーンリテラシーが高まる。ユネスコスクールとも連携したい。
【NPO法人ちば環境情報センター・アトリエ マザリーへの質問・意見】
会場質問 1):
企業が解決する技術的な方法とはなにか?
回答:
防塵ネットを張ったり、凝固剤を固めてかけるなどやっているが、調べてみてここまでひどいというのが関係者全員の驚き。一番の原因は、ベルトコンベアで運搬する際にカバーをしていないこと。その改善も必要だが、工場の統廃合も提言している。
会場質問 2):
財源について
回答:
財源はボランティア的に実施している。アトリエマザリーは、千葉COOPに登録していることから一部、助成してもらっている。
崎田委員:
資料36ページ。公的なものとして制度化するかを明確にしてほしい。
世古委員:
「行政が下からの意見を吸い上げる」という表現は、やめるべき。協働は水平で、市民は下ではない。
回答:
下からの意見というのは、市民を下に見ているわけではない。指揮系統の問題。市長から課長まで。行政の中で健全性が保たれていれば、すぐに伝わり、処理される。指令系統のことを言っている。
会場質問 3):
粉塵測定をしているが、SPMとしてとらえていると思うが、ハイボリュームかローボリュームかどちらのサンプラーでとったか。PM2.5が問題になっているが、測定の対象としているか。
回答:
SPMは市のモニタリングで測定。PM2.5についても、市で監視する。
私たちの調査はプレゼンテーション(見える化)なので、生活実態を見ている。行政と協働することによって、そうした細かい数字は出てくる。
会場質問 4):
企業城下町でこれだけのことができているのはよくがんばっている。網戸まで付着するほどというのは、企業にとっても原料のロスになる。その観点から企業に働きかけるなら有効対策では?
回答・そのような声は上がっているが、まだ伝えていない。これから伝えていきたい。
【日本古紙リサイクル研究会への質問・意見】
崎田委員:
古紙リサイクルの手法としては、国家プロジェクトはマークをつけるだけでいいか?
具体的な仕掛けの提案を説明して欲しい。
回答:
環境省主導についてご意見があったが、政策論としてこの問題をとりあげないといけない、政策論にするには、国家を代表する政府がまず主導する。紙リサイクルの仕組みが出来ればそれをもりあげるのは市民、企業である。
古紙から紙を考えるのではなく、使っている紙が資源になる、資源を有効に使うには上質の紙は上質にするのが資源として、環境にもいい。その考え方を皆が持つことは、1団体よりも日本の環境政策、経済政策にいれたほうが実現しやすく、民間と一緒にやることになる。あえて「主導願いたい」といった。
印刷インクを改善するということは、業界同士では利害関係があってなかなかできない。この紙が古紙になったときはどう分類するかを印刷する、コピー機の紙はメーカーでインクを勝手に開発するなどあるが、それを規制するなどはやってもらい、それを実践するのは市民・行政である。
会場質問 1):
プラスチックの表示のように紙についても表示すべきかということか?
回答:
上質古紙は回収されていないのではなく、リサイクルされていない。単独で回収していないせい。グリーン購入法で一部されているが、もとのものに作り替えるという意味では出来ていない。
会場質問 2):
木質原料477万トン、CO2換算する数字の根拠は?
回答:
木材1トンで1.8トンのCO2を固定化するという計算方法を使っている。紙は紙に返すと言っても、上質紙は段ボールになるが、段ボールは新聞用紙にならないなど、紙は多様に異なる。紙は紙に入れておけばいいのではない。強度や混ざりものなど様々。回収はマークがついたら効率が良くなる。
■ 第10回優秀提言フィージビリティ報告
○ 地域のMRV(測定・報告・検証)制度確立に向けて

〔一般社団法人イクレイ日本〕下久保一博氏

日本の自治体は、法律で温暖化対策に関する計画を作って対策を打ち、排出量を算定して、公表しなさいという義務が課されているが、情報公開には特段の基準がなく、自治体ごとに運用が異なっている。そこで、自治体の活動を測定して、報告して、そして将来的にはその検証につながる、自治体の活動を促進するようなデータの報告・共有制度を作ろうという提案。フィージビリティでは、有識者からなるアドバイザリー委員会を設置し、地域の地球温暖化対策調査を実施。データの分析や集計結果は、プレスリリースや公開セミナー、ウェブサイトにて公開した。

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■ 講評  廣野委員長

今回は二つの部門に分けて募集を行った。その効果があった。発表を聞いても、地方自治体への提言があり、国とのかかわりも必要であるし、連携の必要性もわかった。

発表や提言内容を聞いていただくと、各主体間のパートナーシップの必要性、産業間のパートナーシップの必要性がよくわかったと思う。官民協力というと、通常、民は民間産業となる。今回の発表でお分かりのように、NGO、大学、研究機関などとのパートナーシップの必要性がはっきりと分かってきた。

また、いずれの提言を見ても、新しい社会システムを作っていかないといけないということの重要性が共通だった。

さらに、地元の資源の活用、地域主体ということが提言された。地域の重要性が、わかってきた。自然資本の重要性、伝統文化の活用がそうである。多様性の問題もある。従来の日本の教育では、同質性を尊重する。現在は、多様性を尊重し、個々の主張、人間性、能力をフルに引き出すことが本来の教育である。

最後に、全ての提言に共通するのは、過去において既得権を守ろうとしてきたが、これからはそれでは問題解決にならない。震災でも明らかになった。折り合って、相手のニーズを考え、多様性を尊重し、共通目標に向けてパートナーシップを組むことが重要である。

今後は、ひとつは、私たち人間は自然の一部であるということ。「自然との共生」ではなく、「自然の一部」なのである。その時に、自然の恵みに感謝し、自然の脅威に目を向けるべきである。科学技術のデータに基づき、何か政策的なことをするのもそうだが、科学技術だけに頼ると自然をまた破壊することもある。RIO +20でも提言するが、科学技術だけでなく、環境倫理について考えていくべき。それをしないと根本的な問題解決にはならない。環境倫理に基づいた環境政策が出てくることを期待している。

■ 閉会挨拶  環境省 三好信俊 官房審議官

今回も、多彩な分野の提言が集まった。

また昨年度、震災の影響で発表の機会を持てなかったイクレイ日本からフィージビリティ調査についても聞発表していただき、提言頂いたものに環境省がどう対応しているかについて、イメージできたのではないか。

環境教育等促進法は、政策決定や民意を反映させるということがうたわれている。このフォーラムがやってきたことが、いよいよ法律に位置付けられたことが感慨深い。

10年に続いたノウハウを生かし、今後も民意を政策に取り入れていけるよう準備したい。

■ 環境省担当との直接対話(非公開)

フォーラム終了後、発表提言団体は、環境省の担当課及び委員と、提言の実現に向けた意見交換を行った。